私の好きな一枚のジャズレコード


私の好きな一枚のジャズレコード
Kind Of Blue Miles Davis

このアルバムを聴いたのは10年以上前。当時はロックやブルースにしか興味がなったが、たまにはジャズを聴こうと、この名盤を手に取った。いまいちピンと来なかった。ところが3.4年前から好んでジャズを聴くようになり、久しぶりに聴いた時、なんだろうか、心に響くものがあった。その響きは次第に大きくなり、「なんだなんだこのアルバムは」と気になり出したのがきっかけでよく聴くようになった。少し落ち着きたい時に、大きな音でじっくりと聴く。シンプルな音、美しいメロディー、心地よいフレーズ、わびとさび、豊かな表現に心満たされ浸る。メンバーは、マイルス、コルトレーンキャノンボール、ビルエヴァンス、ウィントンケリー、ポールチェンバース、ジミーコブ。チェンバースのベースがとても心地よい。音が楽しくウォーキングしている。坂を上ったり下ったり上ったり。
1950年代、チャーリーパーカーの登場によりジャズはスウィングからビバップの時代になった。複数のコードの組み合わせになったジャズはますます複雑になっていった。そんな中、少ない音でより豊かな表現ができないかという究極を実現したのがKind Of Blueだ。経営学的に言うとこのアルバムは価値の転換を起こし、もっとも売れたジャズレコードとなった。リーダーのマイルスの先見性はジャズを変え、凄腕ミュージシャンたちを一つに束ねる統率力は音楽を変え、イメージの実現力は世界を変えた。 さらに驚くことにアルバムの曲は、ほぼ一発録りに近かったと言う。知れば知るほど凄い。聴けば聴くほど深い。1954年制作のアルバムは今も色褪せることはない。ある本に書いてあった。偽物は変わり続ける、本物は変わらない。