犬を飼う

今日珈琲屋さんに豆を買いに行った。店内奥には1匹の犬が寝そべっていて、ウー、ウー、と苦しそうに泣いている。店主に聞いてみた。わんちゃん、病気ですか? 年老いた犬でねぇ、もう16歳、人間でいったら90歳ぐらいなんだよね。ウー、ウー、ウー、小さな店内に響く泣き声。大丈夫よ、もうちょっと待ってねと豆を袋に詰める店主。

「犬を飼う」という漫画を想い出した。谷口ジロー作品の中でも大好きな作品だ。最期が近づいた犬とあたたかく見守る家族の短編もの。もうすぐ別れる犬と家族の物語なのに、タイトルは「犬を飼う」。きっと最期には、別れる悲しみ、出会った喜び、一緒に過ごした日々の愛しさが入り混じって、「飼う」ということが最大限になるんだなぁと思ったその時、この作品の偉大さに身震いがしたのを想い出した。珈琲屋の店主、犬を飼う。